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なおたん~!

直江、お誕生日おめでとう~!!

毎年イベントでお祝いできなかったけど、今年は小話書いてみました。
一応設定は、ミラフェスアンソロ漫画の、新婚な二人。
知らなくても読めるとは思います。
直江がちょっとかっこ悪いですが、まあ結果的に幸せならいいよって人はどうぞ(笑)
読まれる方は、下の"続きを読む"よりどうぞ。


直江が実在するとして、実年齢って何歳なんだろう…45歳くらい?

やば…っ…萌えた…

高耶さんはファザコン(?)でもあるので、おじさん好きだと思うですよ。
20歳そこそこのかわゆいひよっこ高耶さんが、45歳の直江と対面したら、ナイスミドルぶりに、こう、直視すらできなくなると思うですよ。
直江も45歳にもなれば、丸くなってて(もしくは野獣を己の中で上手く飼いならしている…笑)、ニッコリ悩殺ナイスミドル笑みを会得してると思うですよ。
ニッコリやられた高耶さんは、真っ赤になって顔を思いっきり背けると思うですよ。

なんですかこの妄想。どうですかこの妄想。
自分でしててドキドキしてきました(笑)





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「な、直江! 誕生祝いに欲しいものあるか?」

 予定外の残業を乗り越え、いそいそと愛妻――というのは直江の談で、呼ばれている当人は今だ認めてないが――が待つ我が家へと帰宅した。
 すると定番の挨拶もそこそこに、愛妻こと仰木高耶は突如そんな質問をぶつけてきた。
 玄関を入ったと同時に飛び込んできた不機嫌顔に、何か怒らせるようなことをしただろうかと懸念した直江であったが、そういうことかと納得する。
 高耶という青年は、非常に意地っ張りで、負けず嫌いの恥ずかしがり屋だ。そんな言い方を当人にすれば、もの凄い勢いで否定、もしくは激怒されるだろうが。
 そこから推測するに、彼なりに近づいた直江の誕生日に何かしたいと考えてはみたが、何も思い浮かばず、かといって本人に聞くのも悔しいし恥ずかしい。自分でなんとかしてみようとギリギリまで頑張ってみたがやっぱり駄目で、こうして聞くに至ったのだろう。
 この表情はそうした葛藤の末の、悔しさと羞恥がミックスされた結果という訳だ。
 そういうところも可愛いと、幸せ気分のままうっかり笑いそうになるも、ぐっと堪えた。そんなことをすれば、彼の感情が怒りへと完全にシフトされてしまうことは、これまでの経験で多少ならず学んだ。
 緩みそうになる顔を、考える素振りで持ち上げた手のひらでさり気なく隠し、口を開く。
「そうか、そういえばもうそろそろですね。すいません、忘れてました……ので、何も考えてなくて。ちょっと待ってください」
 本当に忘れていた直江は、まずは正直に告白した。高耶の誕生日を忘れた年など出会ってから一度たりともないが、どうも自分のことは昔からおざなりになってしまう。
「お前は……」
 呆れた声と同時に、何処か恨めしげな高耶に睨まれた。
 自分が色々必死に悩んでいたというのに、祝われる当人が忘れているとなると、そんなものだろうか。
 これまで高耶は、毎年直江が身につけられるようなものや、自分の手で作ったものなどをプレゼントとして用意してくれていた。正直、彼がくれるものならどんなものでも嬉しいし、贈られる品物はいつも、彼の年にしては高価なものだったと思う。そういうこと一つ取っても、直江に喜んで貰いたいと必死に考えた結果であるとわかっていた。
 そんな高耶が今年に限ってこうして悩み、色んな感情を飲み込んで本人に尋ねるくらい力が入ってるのは多分、彼曰く「同居」してから初めての祝い事だからだろう。
 嬉しさも一入だ。
「そうですね……欲しいもの……」
 高耶の心遣いに報いたいと必死に考えるが、祝うことには慣れていても、祝われることに慣れない。内心頭を抱える。
 こだわりが強いのでそうは見えないかもしれないが、そもそも直江は物欲そのものは薄いタイプだ。手に入れるのにこだわりはすれ、それに執着することが殆どといってない。そんな彼がこれまで唯一「絶対欲しい」、手にしたからには「手放さない」と思ったものは唯一つだけだ。
「高耶さん……」
「は?」
 名を呼ぶ意図ではなく、ふと口をついて出た言葉だったが、自分自身妙に納得してしまう。そういえば別の時に近い言葉は口にしたことはあるものの、贈り物の要求としてそ口にしたことがなかったなと、怪訝そうに首を傾げる高耶に向かい、改めて微笑む。
「高耶さんだけです」
「何が?」
「だから、今まで欲しいと思ったものです」
「っ!」
 直江から先程受取っていたビジネス鞄を取り落とした高耶が、頬に朱を散らしながら眉を潜める。一緒に住むようになって半年以上は経過したというのに、こうしたことに対する彼の初々しさは損なわれないようだ。
「あほか! それじゃ意味ねーだろうがッ!」
「十分意味ありますよ」
「ねぇよ馬鹿! そんなんいつだってやってんだろうが!」
 ビシッと直江を指差した高耶は、仁王立ちで言い切った。
「…………」
「…………」
 睨みつける高耶と直江の間に、妙な空気が流れる。
 ――――いや、主に妙な空気を流しているのは直江であるが。
 言った当人は、その言葉の意味がわかっていない。いきなり黙り込んで俯く直江に、不安を覚えたのか、距離を縮めてくる。
「高耶さん……」
「おわっ、いでっ!」
 いきなり腕を取られ、強い力で引っ張られた高耶は、よろけて直江の胸に鼻をぶつけた。
「い、いきなり何だよ! いてぇだろうがッ」
「いつだって下さってるんですね」
「人の話聞いてるのか?! ったく、何がだよッ」
「いつでも俺のものってことで」
「はぁ………あああああぁぁ?!」
 漸く自分が放った言葉の意味に気付いたのか、語尾を吊り上げた叫び声と共に、直江の腕の中で暴れ始める。離さないとばかりにぐっと腕の力を強めると、器用にも身を軽く捻り、下へと抜け出してしまった。
 逃げられると思った直江は、すぐ追いかけるように膝をつく。だがしゃがみ込み、膝を抱えた高耶は、それ以上動こうとはしなかった。目の前にある旋毛に小さく笑いながら唇を落とす。
 感触に小さく身体を震わせるも、高耶は丸まったままやはり動かない。髪の隙間から覗く両耳が、見事に赤く染まっていた。
 あまりに可愛い反応に、愛しさともっとそんな彼がみてみたいという子供じみた悪戯心が湧き上がる。その美味しそうな耳元に顔を寄せ、そっと囁いた。
「凄い告白をありがとうございます。何よりの誕生日プレゼントですよ……」
 一番のポイントである「告白」のところに力を込めて言う。
 しかしそれに対する返事はなかった。羞恥に悶絶しているのだろうか。何て可愛らしい人だと、再度震える旋毛に唇を寄せようとした直江であったが、それは叶わなかった。
「ご……ッ!!」
 ゴツンという小気味よい音と共に直江の顔は上向き、それに合わせて身体が後ろに揺らぐ。壁に背中をぶつけて、再度呻き声があがった。
 急に立ち上がった高耶の頭が、直江の顎に見事クリーンヒットした為だ。
「いたた……いくらなんでも酷いですよ、高耶さ、ん……」
 生理的涙を目の端に溜め、立ち上がった高耶を見上げて苦情を申し立てるも、言葉途中で固まる。
「揶揄ったな、直江……オレが真剣に聞いてるっつーのに……」
 メラメラと音が聞こえそうな瞳で見下ろしてくる青年に、直江の顔が引きつる。どうやらちょっとした「愛の」揶揄いのつもりが、本格的に怒らせてしまったようだ。
 いつもは可愛いという想い沸くこと多い高耶だが、そういう瞳をすると一気に色気が増す。本気で怒らせるとこじれること請け合いなので、あまり怒らせたくないとは思うが、この瞳を見るのも好きだったりする直江だ。恋は盲目と言っていいものか。
 さてどうやって宥めるか。自業自得とはいえ少し泣きたい気分だ。
「いや、そんなつもりは! あまりに可愛かったので!」
「誰が可愛いだッ! この万年色ボケ!!」
 慌てて口をついて出た本心が、益々事態を悪化させてしまう。
「やめた! お前の誕生日なんか知らねぇ!」
「そんな……ッ!」
 情けない顔で言い寄る直江を、「はっ!」と鼻で笑った高耶だったが、気を取り直したように「そうだな……」と何事か思案するように呟いた後、麗しい微笑みで見下ろしてきた。
「じゃあ可哀想だしケーキだけは作ってやるよ。オレは実家に帰るからさ、お前は一人で自のケーキにロウソク立てて『ハッピバースディトゥミー』ってやってくんない? 勿論ちゃんとビデオに撮っといてくれよ。ほら、千秋と綾子が置いてったビデオカメラがあんだろ? 後で見るから。ああ、それにしよう。それに決定だな」
「ちょっ、高耶さんッ!?」
 凄い提案をあっさり口にし、納得したように頷く高耶に、直江の焦りは頂点に達した。言いたいことは言い終えたのか、返事を待たずしてリビングへと向かう背中を必死に追いかける。途中、意識と視界が狭まったせいで、高耶が先程取り落としたビジネス鞄に躓きそうになったのはご愛嬌だ。
 こんな姿、誰にも見せられたもんじゃない。まあ生涯誰かに見せることはないだろうが。「冷静沈着」と名高い直江を、ここまで焦らせることができる人物は一人しかいないからだ。
「待ってください、高耶さん! すいません、俺が悪かったですから許してください! ほんとに嬉しかったんです!」
「知るか!」
「高耶さ~ん!!」
 直江の悲痛の叫び声は、防音の行き届いたマンションだったお陰で、やはり高耶以外の耳に届くことはなく終わった。





 直江が高耶の本気の怒りを宥めるのにかかった時間は3日。
 奇しくも誕生日前日の夜であった。
「反省してるか?」と問われ、首振り人形顔負けに頷く直江に、「じゃあ実家に帰るのはやめる」と、ただ一言宣言し、その晩の高耶はさっさと背を向けて寝てしまった。
 まだ怒っているようにも見えるが、それが照れ隠しだというのは確認するまでもなくわかったので、直江も大人しく彼に習って眠りについた。
 当然ながら翌日、毎年のような「誕生日プレゼント」は用意されておらず、いつもよりちょっと豪華な夕食をとっただけに終わった――のだが、直江の機嫌はすこぶる良かった。

 それはその朝、目覚めた直江に高耶が開口一番、不機嫌顔で放った一言が大きく関係している。

「仕方ねぇから今日もお前にやるよ」

 今日「も」、最高のプレゼントは直江の手の中にあるようだ。