暴れん坊JOJO/番外

戸惑う手のひら


 
ひとりで使うことが多いことから考えれば立派な船とはいえ、ベッドのサイズなどたかがしれている。
たしかに通常のサイズより大きいが、それを利用しようという人間の体躯も立派なのだ。しかも×2で利用しようとしている。
けっきょく仗助を船にのせると、一緒に寝ようと寝まいと、ベッドは収納したまま、マットレスが2つその床にひきっぱなしとなる。

「なんか不思議っすよね・・・」

半分とろりとまどろみながら、仗助が承太郎の手を頬に引き寄せる。
仗助は承太郎のてのひらをひどく好む。
無意識にねだる。逆にいえば、てのひらをねだる仗助は一番あけすけな、無防備な状態でいるときだと分かる。

「手がどうかしたか」

承太郎は、なかば返事が返ることは期待せずに、まぶたを閉じている仗助にささやいた。

「・・・うん。DIOってさ。すげえな、って」
「DIOだと?」

予想外の答えに、承太郎は思わず、眠りをさえぎるような、普段の音量で聞き返した。
その声色に、半分ほど仗助の目がひらく。

「・・・だって俺には見たこともないヤツなのに、大昔のご先祖様って言っていい伝説みたいな存在なのに。きっと、俺たちの手は・・・スタンド能力は、DIOのために生まれたんだ」

DIOが世界に在るべきでない存在を生み出したから。

「これは世界に還すためにある最強の手」

DIOが摂理に反した力で奪うから。

「これは摂理さえくつがえして取り戻す手」

ふにゃり、と笑うあどけない、といってもいい表情に反して、話す内容は剣呑だ。むしろ、これだけ無防備だからでてきた言葉かもしれない。
承太郎はため息をついた。

「なるほど、そんな一面もあるか。しかし仗助・・・」

てのひらで仗助の頬を包むようになぞると、今にも喉を鳴らしそうに、目をほそめて喜ぶ。猫みてぇだな。思わず苦笑がこぼれた。

「こんな状況で他の男を『すげえ』なんて言うもんじゃねぇぜ」

引き寄せて耳元に吹き込むと、ふるりと肩をふるわせて、そのまま擦り寄ってくる。どうやら限界らしく、承太郎の肩口になついたまま眠りにおちた。

仗助にとっては『伝説』かもしれないが、承太郎にとってDIOはどこまでもリアルな『人間』だった。
人であることを辞め、人を超えようとするのは、『人間』だからだ。
承太郎がはじめて殺意をもって追い、殺害した存在。

仗助の規則的な呼吸を感じながら、承太郎もまた眠りに身を任せる。
ゆるやかな波のゆれに包まれるように眠ると、海のなかにたゆたう錯覚を覚えた。
それともこれは、この海につづくどこかで眠るジョナサン・ジョースターの夢かもしれなかった。  

 

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