意識のふちの乾いた砂

吐露


 
あの子とであったとき、私はようやく子供という領域を抜け出そうとしていた頃で、あの子といえば、ほんとうにただの子供だった。
誰もが私たちが寄り添って生きることに、疑問を持った。
それでも私にはそれがまるで理解できなかった。なんの心配も感じなかった。
思えばやっぱり私も子供で、あの子も子供、大人のいない夢の国にいたようなものだったのかもしれない。
醒めない夢は無いのに、私はそれが永遠に続くものだと思っていたのだ。
その手に触れれば優しくて、暖かくて、なぐさめられた。
殺したくもないものを殺し、呼ばれたくもない名で呼ばれることに、私はすこしずつ乾いていた。
固く白く、砂塩のように、強固に見えて触れれば崩れる脆い壁のように。
あの射るような目で断罪し、小さな手がもう少し大きくなったら、このどうしようも出来なくて途方にくれている私の壁を突き崩す。
ゆるやかにひたひたとやってくる崩壊を、約束された最後の日を私にもたらすように、私はあの子を選んだ。

私の喜び。

それすら得られなかった絶望。

やがてそんな考えすら、幼いものだと、すこしだけ歩くことを知ったころに、あの子によく似た手が再び訪れた。
ちっとも似ていない、同じ手。
変わらない暖かい手だったけれど、前にはなかった水をてのひらにたたえていた。
にがい水。
私の壁を崩すのではなく、少しずつ押し流そうとする。
もういらないのに、忘れようとしていた結晶を暴き出す手。
それともそんな結晶は、本当にあるのだろうか。ただなくなって、私は消えていくばかりではないと、どうして信じればいいのだろう。

おろかしいことに、私を暴きながら、消えないでくれと抱きしめるこの手だけが。
今も私の輪郭をなぞって、私に知らしめるのだ。
 

 

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