『しもやけ』 昼休み。 節電のために電気を落とした、昼なのに薄暗い職場。 同僚はランチに行ってしまったのに、こうして一人淋しく仕事をしている。 どうしても午後までに仕上げてしまわないといけない書類があるから。 それなのに、足が気になって集中できない。 しもやけができてしまったのだ。こんな時期に。 左足の小指、薬指、中指。 とくに薬指がかゆくてたまらない。 最初「水虫か!?」なんてドキドキしたけれど、やっぱりしもやけらしい。 気がつくと、そこだけ熱を持ってじんじんしている。 今年は調子よくて、しもやけに全然ならなくて。 気がついたら3月になっていて。 お、今年はしもやけナシでいけるかも? なんて期待してたのに。 ・・・なっちゃいました。痒いです・・・。 デスクの下で、足をもぞもぞさせる。 本当は、クツを脱いで、ぽりぽり掻きたい。 でも掻いたら掻いたで「痛痒い」っていうか。 普通に蚊に指されたようなああいう痒さとはまた違うんだよねえ。 なんてことを考えていたから、後ろに人が立っていたのにも気がつかなかった。 キレイな指先をした、それだけで恋に落ちてしまった、人が。 「何もぞもぞしてんだ。トイレか」 「ちっ、違いますよ!」 慌てて後ろの人に抗議してみるけど、からかわれているのがわかっているから面白くない。 くくく、と書類を口元にあてて、笑いをかみ殺しているその人に唇を尖らせて言い訳する。 「しもやけなんです。左の薬指がとくに痒くて」 「ほお」 子供みたいだなあ、と呟く声まで聞いてしまった。 ますます面白くない。 ああ、これは今日ゆっくりお風呂につかって温水と冷水と交互にかけて。 色々としもやけ対策が頭の中をかけめぐる。 「血行がよくないんだな」 「・・・そうみたい、ですね。頭の中もそうみたいです」 「そうだな。俺の気持ちにも全然気がついてなかったみたいだしな」 「・・・・・・・・」 いくら周りに人がいないからって、そういうこと言うのやめてください。 視線が画面から、キーボードの置いてあるデスクに移った。 ------恥ずかしくて視線を落としてしまった。 彼はそんな私の様子がおかしくてたまらないらしい。 さらにからかうようなことを言う。 「左の薬指、なんて足のほうが正直だよな」 ええ、もう何とでも言ってください。 とりあえず、この書類仕上げてしまいますから。 そしたら、遅いランチ一緒に食べにいきましょう。 |
『指先』の続編。あの出来事(?)の直後くらいのイメージで。 読まれてない方は、「なんじゃこら」って感じでしょうね(^^;ごめんなさい。 『指先』←コチラからドゾ! そういえば、今年しもやけになってないなあ、と思って。 指関係で、この二人をからませちゃえ〜。ということで。 それにしても、私、「一緒に飲もう」だの「コンビニ行こう」だの 食べ物関係のお誘いで終わる話多いすね(滝汗)お腹へってんのかなー。やだなー。 うん、でもおいしいもの食べたら幸せになるよね♪(笑) >>Novels top |