暴れん坊JOJO

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「いよいよ開店だね!仗助くん!」
「おう!」

僕、広瀬康一と仗助くんは改装が終わった建物を見上げた。
高校を卒業したあと、仗助くんは美容師になるための学校へ行くために東京へ行った。
地元の大学にいくことになった僕に「ちょっと留守にするけど、出来るだけ帰ってくるから、よろしくな」って言われたときには驚いたけど。 だってなんだか仗助くんは杜王町にずっといるような気がしてた。なんていうか守護神?みたいな。警察官になるのかな、って勝手に思ってたし。
そういったら、仗助くんは笑ってた。
 
「俺もそう思ったんだけどよ〜」
 
警察官は公務員なわけで。当然希望した場所で任務につけるとは限らない。むしろ最初は地元じゃないほうが普通なんだって。
 
「それによ〜、リーゼントはまずいよな。刈上げられそうになって、教官の顔変えたりしたら、アッちゅうう間にクビっしょ」
「たしかにね」
 
それにやっぱ自営業じゃないと、いざって時に自由にならないしなぁ。
髪型ありきで職業をきめるなんて、ってなんからしいよなぁ、って笑っちゃったけど、続いた言葉に驚いた。
やっぱり仗助くんの中では、この町を守るってことが大前提なんだなぁ、って嬉しくて、心強くて。
だから「留守の間はまかせてよ!億泰くんもいるし!」って見送ったんだ。
 
仗助くんは東京で学校にいったんだけど、資格をとって有名な美容室に採用された。
すぐになんかコンクールで新人賞を取ったらしくて、ルックスもあいまってカリスマルーキーって騒がれた。
モデルも多少関連してやったみたいで、由花子さんにファッション雑誌を見せられてびっくりしたのが昨日みたいだ。
そのうち、海外のファッションショーなんかにスタッフとして参加するようになって、まだ表立って名前が出るほどではなかったけど、僕でも知ってるような有名なデザイナーのショーにも携わったりしたみたいだ。
さすがジョースター家ってやることがトコトンだよなって、億泰くんと笑ってた。
でも後で思ったんだけど、きっと、修行だけじゃなかったんじゃないかな。
承太郎さんも海外を飛び(というか海上の場合は航行っていうべき?)回ってる人だ。ジョースター家の人たちはそういう人が多いらしい。きっと本来なら小さなコミュニティーにおさまるような人じゃないんだろう。そういう器のおっきさみたいなものは、時々仗助くんからも感じることがあった。
 
それでも約束どおり、仗助くんは帰ってきた。
仗助くんだけじゃない。「承太郎さんと住むことになったから、家を買ったんだ」って言われたときはほんとに……ホントに僕って出会ってからずっと、驚かされてばっかりだよ。
 
「……ねえ、億泰くんはわかってるのかな」
「あ〜、どうかなぁ。やっぱ恥ずかしーしよ、一緒に住むとは言ったけど。あいつの場合は気づいてねぇかもなぁ〜、馬鹿だから」
 
仗助くんが億泰くんにいう『馬鹿』は『純粋』って言う言葉とよく似てる。だから余計に言いづらいのかもね。
仗助くんたちは海が見える場所に建っていたコテージを買った。
新築じゃないけど、お店にするためにけっこう改築された。クレイジーDとザ・ハンドを使ってだいぶ安上がりに済んだぜって、笑ってる二人はどうみても高校生のころのまんまで。
1階がお店になってる。仗助くんがひとりでやるには広すぎるくらいだ。テラスがついてて、ゆったり自由にお茶したりもできる。
2階がふたりの生活場所、全体の半分くらいのスペースだけど3階もあって客室になってる。
 
「承太郎さんはさ、フィールドワークに出ちゃうとしばらく留守になるからな。俺ひとりじゃ、ちょっと広すぎるくらいだけど」
「大丈夫だよ、だってぜったいにぎやかになりそうだもん」
「ま〜な〜、おふくろとか、……ホーリーさんとかじじいまで、遊びにくるとか言ってっしなぁ」
 
2階から直接つながる階段のドアが開いて、承太郎さんが出てきた。
 
「あれ?どうしたんだろ、なんか機嫌わりぃな」
 
僕にはあんまりわからないけど、仗助くんが言うんだし、そうなんだろう。普段と変わらないっていうか、もともとあんまり変わることがない承太郎さんの表情だけど、僕はちょっと身構えた。
 
「やれやれだぜ。仗助、話がある」
「なんかあったっすか?」
「突然で悪いが、娘を引き取ることになった。もう駅まで来てる」
 
仗助くんにもよく驚かされるけど、承太郎さんの場合は威力が並じゃない。『驚愕』ってかんじだ。
真っ白な頭でそんな感想がよぎった。恐る恐る隣を見上げると、仗助くんが口をあけて固まってる。
 
「あ、あの『娘』って承太郎さんのお子さんなんですか」
 
僕はフリーズした仗助くんに代わってたずねた。仗助くんの驚き方からいって、もしかして、知らなかったのかなって思ったから確認したんだ。
 
「ああ」
「い、……いくつ、なんすか」
「5歳だ」
「奥さんもきてるんすか」
「『前妻』だ。わからん。とどけたと言ってきただけだ」
 
やっぱり知らなかったんだな、仗助くん。酷いよ承太郎さん。
バツイチだって仗助くんに聞いたときにも、なんだか意外だったけど、子供までいたなんて。しかもまだちいさい。
どうして仗助くんに打ち明けておかなかったんだろう。承太郎さんはいつもフェアなのに。なんだからしくない気がする。
仗助くんはうつむいてしまった。
 
「とにかく行って来る。腹がたつんなら殴ってもいいけどな。逃げんじゃねぇぜ」
「……」
「仗助」
「……わかってるっす」
「今日はホテルに泊める。もどったらちゃんと話す」
「はい」
 
仗助くんは背が高い。承太郎さんのほうがさらに高いから、うつむいた仗助くんの顔を見れないだろうけど、僕には残念ながらよく見える。
僕は心配になって仗助くんの手を握った。
 
「康一君。悪いが俺が戻るまで一緒にいてくれるか」
「大丈夫ですよ。帰ったりしません」
 
承太郎さんは一瞬仗助くんの上に視線をおとして、そのまま車庫から車で駅に向かった。
 
「仗助くん」
「……最悪だ」
「承太郎さんだもん。ちゃんと理由があるんだよ」
「理由なんてどうでもいい。俺が父親を奪ったってことにはかわりねぇ」
「え??」
 
そっち?そっちなの?
僕はてっきり承太郎さんに怒ってると思ったのに。
さすがに怒っても仕方ないよって、思って。でもスタープラチナとクレイジーDじゃ、やばすぎるから冷静にねって、そんなつもりだったんだけど。
 
「俺、おふくろんとこ行くわ。康一ありがとな」
「ちょ、ちょっとまって。承太郎さんはここでまってろ、って意味でいってると思うよ」
「承太郎さんとは一緒に暮らせねぇ」
「ええ!」
 
うわ〜〜〜っ、まって!どうしてそこまで一気にたどりついたの?
ハイ、そうですかって、そんなことしたら、僕が承太郎さんにどんな目でみられるか!!
承太郎さんに認められるって、すっごく誇らしいんだ。どうしてかな、そう思わせるんだよね。当然、逆はえらく傷つく。責められたりする訳じゃないけど、やっぱり役に立ちたいって思うし。
それに、今、ちょっと気づいたんだ。どうして承太郎さんが、仗助くんに言わなかったのか。たぶんこれで合ってる。
だったらなおさら仗助くんをここにいさせなきゃ。
だって、仗助くんに、本当に本気なんだって、実感させられちゃったんだもん。

 
「仗助くん。ダメだよ。君はここにいるんだ。どうしてもっていうんなら、ACT3で固定するよ」
「康一……」
「部屋で待とう。何か連絡があるかもしれないし」
 
しばらくにらみ合っていたけれど、結局仗助くんは僕の本気を感じ取ってくれたみたいで、折れて階段を上がった。
 

 

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