THANATOS

1


 
砂地を走る文様に声を失う。
まるで磁石に吸い寄せられる砂鉄の描く絵のように、砂の高低で大地に竜が描かれていた。
大きな翼が曲線を描き、円を形作るように曲線は尾へと続く。
その中心に守られるように少年が倒れていた。
胎児のように手足を縮め、眠る少年の表情は黒髪が覆っていてうかがえない。
 
「生きているのかな」
「起こそうとしたけど近寄れないんだ」
 
描かれた竜の文様の周りを囲むように立つ複数の影も、少年の域を出ない。
 
「目覚めるまで隠せ。交代で幻術をかけるんだ。……どの陣営にも気取られるな」
「月はご存知かな」
「知っていたところでどうなる。もう力がないことはあきらかだ」
「俺たち自身で選ぶんだ」
「でも本当にこいつが……」
「間違いなく竜の騎士だ。奪われるな。これできっと変わる」
 
言い合う少年たちを制するように、声が響く。
 

「三界で唯一の 『調停者』 だ」
 


 

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