Eat with you on the weekend

6. We are all innocent


 
けっきょく思うとおりにしてしまったな、とヒュンケルはキスのあいまに思う。

あんな風に言えばまず受け入れるだろうと思った。
少しばかり余計な打算もある。この関係はヒュンケルが求めたものに形ばかりでもしておきたかった。
求めあったが、つけこんだのはヒュンケルであるべきだった。アバンには多大な責任がいまも厳然として存在している。とてもこの関係が、寛容とともに万人に受け入れられることではないとヒュンケルも承知している。それでも欲しかったからだ。
この男に知られたら、それこそ侮辱だと怒り出しそうだったが、むしろそれはヒュンケルのための保身なのだと理解できまい。
だからこのささやかな思惑は悟らせるつもりはなかった。
それとは別に、本当にアバンを思うなら経験のある自分が受身の方が負担は少ないのに、とも思う。
そうは言っても、体験はあまりに遠い日のものであったし、さっぱり快楽とは無縁のものでしかなかった。
そして自分でも驚くことに、ヒュンケルはアバンで快楽を得たかった。
ソファに横たわるアバンの身体に掌を這わせて、ボタンをはずしていく。お行儀よく、ひとつづつ。

「ちょ、ちょっとまって、ここで?」

我に返ったらしいアバンに、肯定と決定の意思のあらわれた表情をつくって、作業を続けた。

「部屋に」

いろいろ便宜を考えればそのほうがいいことはあきらかだが、ヒュンケルは中断する気がなかった。
いまさらアバンにためらうような隙を与えるつもりもなかったし、じらされるままにお預けされるつもりはもっとない。
汚さない、と短く言い放つと作業を続ける。俺が何をしようとしているか解かっているな?と聞くと、一瞬間をおいてアバンはうなづいた。

「おい、解かっているんだろうな」
「知ってますが、本当にできるものか少々疑ってもいます」
「それなら問題ないな」

アバンの上着をすっかり肌けさせて、下を引き抜いてその太腿を自分の膝に乗り上げるように抱えると、ヒュンケルはシャツを脱いだ。そのシャツをそのままアバンの尻のしたに敷くようにつっこんだ。

「ちょっと、あなた後で何を着るつもりですか」
「何か貸してくれ」

しれっと答えるヒュンケルにアバンは抗議の声にならない唸りをあげた。

「病気は持っていないと思うが、絶対にないとは言い切れない。過去の環境を考えれば。不安があるなら今断ってくれ。たぶん後では止めてやれないと思う」

準備万端なあられもない体勢でいきなり宣言するヒュンケルを、アバンはぽかんと口を開けて見上げていたが、がくりと脱力する。

「もう、ヒュンケル、あなた口を開かないでください。喘ぎ声以外」

深く求められる口づけにこたえながら、アバンはあんまりなヒュンケルの唇に噛み付いた。たがいに笑う息遣いが唇から直接に伝わる。
ヒュンケルは、あらわな肌に掌を這わせた。小さな突起を指の節に引っ掛けるように撫でると、白い肌に緊張が走るのが伝わってくる。やわらかな粒がかたくなったのをこねるように手は行き来した。
ヒュンケルが首筋に顔を埋めると、ためいきのような声がふってくる。
普段さらされることのない白い肌からは、ほのかにあがった体温とともにアバンのにおいが感じられる。
それがヒュンケルをより高ぶらせる。
もっと我慢ならない衝動に突かれるかとおもったが、それよりも楽しみたいという気持ちが勝った。より感じさせたいとも。
暴いたアバンの下肢に手をのばす。やわらかな茂みをわけて、包むように握るとゆっくりと動かした。
びくりと反応する性器を少しずつ緩急をつけて締め上げる。袋にも指を這わせて、体毛ごと擦り付けた。

「あぁ……」

耳に届く深い声と、すいつく胸元のから唇に直接つたわる声の震えを味わう。
勃起した性器の根元から先端までをなで上げると、先端からにじみ出た液がくちゅりと音をたてた。わずかな音であるはずがひどく耳について、ヒュンケルは自分の下肢に比例するように重みを感じる。
その音と感触はアバンにも感じられたらしく、閉じていた目を開けてヒュンケルを探すように視線をめぐらせた。
ヒュンケルは柔らかな肌の感触を惜しみつつ、伸び上がってアバンに口付ける。その間も手はひたひたと追い上げつづけた。

「俺もだ」

触れるまでもなく持ちあがった自分の性器を、濡れたアバンのものにすりつけた。
ヒュンケルが上体を倒すように、急激に高ぶる互いのものをすりあげる。裏筋がたがいのくびれに酷く刺激されて荒い息のあいだに呻く。盛り上がるようにぱんぱんに張り詰めるのがわかった。お互いにかみ合わない同じ形の異物を、むりやりすり合わせる感覚がたまらない。
ヒュンケルが腕にかけていたアバンの足を肩へと押し上げる。つられてアバンの尻があがると、濡れた指で袋と奥まったすぼみの間をたどって這わせた。

「んんっ」

普段は触れることも無い薄い皮膚への刺激からの快感か、それとも性器を覆っていたてのひらから外気に晒された不満か、鼻にかかった声をもらすアバンの声に刺激される。胸を捏ねていた手をあいた下肢に下ろして、アバンの性器だけを追い上げた。
アバンの腕がヒュンケルの肩を抱き、のけぞるようにその腰をゆらめかせて、ヒュンケルの手の動きをたすける。ざらりとたがいの茂みが擦れ合う感触にこめかみが熱く、激しい鼓動が耳奥に鳴る。
アバンは夢中になった。追い上げられるたびに、背中の筋肉がこわばる。頭の隅で、ヒュンケルは、と意識をするが、すぐにはりつめた快感にちりぢりになった。

「あ、あっ……!」

一瞬アバンの息がつまり、やけつく感覚と、覚えのある痙攣が下肢をおおう。
脱力して落ちる背にするりと腕をまわされて、強く胸を合わされる感覚に満足した。他人にもたらされる快感を知らないではないが、女性とはまるで違う、男の快感をえぐるように引き出そうとするそれは、ひどく気持ちよかった。
肩を抱いていた腕をゆるめヒュンケルの髪に掌をもぐりこませると、アバンは深呼吸をくりかえすあいだくしゃくしゃにかきまぜる。
目をあわせると、アバンはわらった。

「気持ちいい」

ヒュンケルの目が喜色に細められるのに、アバンは言葉にためらわない自分の性格に感謝する。
自分の液体に濡れた性器とその奥に、さらにいくらか冷えた液体をまとった手が探るのに、びくりと肩をゆらした。

「なに?」
「傷薬だ。息をはいて」

ヒュンケルの誘導にすなおに深呼吸するアバンの奥に、指を入れる。短く息を吸うアバンをなだめるように、もう片方の手で熱を吐き出して幾分なえた性器をゆっくりとすりあげた。

「それ……やだ、今……感じすぎ……」

アバンの抗議を聞きながら、しかし無視して、呼吸にあわせてゆるりと身体ごとゆする。見計らって指を根元まで挿すと、押し上げる弾力のぶんだけで馴染ませるように行き来させた。
掌であたためたとろりとした傷薬の力もかりて、指を増やす。増やした中指を根元まで入れてすこし曲げると、アバンがびくりと身体を震わせた。
ポイントを撫で、指先に感じる微かな感触を押しつぶす。
アバンの声が途切れることなく漏れ出て、どうにもならないというように、挟み込んだヒュンケルの身体に内股がひきつれるように絡みつく。
3本指が入ると濡れた指を引き抜き、傷薬をそそぎ足し、ヒュンケル自身にも塗りしごき上げた。
やわらかくなったすぼまりに、性器の先端が押し当てられ、力が加えられる。くちゅ、と先端が沈もうとするとアバンの身体が緊張にこわばる。

「ちょ、ちょっとまって、あ、ちょっ……」

胸を押し返すように、我にかえって押しとめるアバンをじとりとヒュンケルは睨みつけた。

「……アバン」
「いや、だって、太い気が……やっぱり無理じゃ」

もじもじと押し当てられた先端をそらそうと身体を動かし、下肢を確認しようと身体を起こそうとするアバンを、やんわりと、しかし断固とした力でヒュンケルはソファに押し戻した。

「……気のせいだ。たいしたことはない。小指ほどだ」
「そう、そうですか……ってもっとマシな嘘をつけ!!」

そんなわけあるか!嘘つき!!と喚きたてるアバンを今度こそ無視して、ヒュンケルは一息に突き上げた。
 

 

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